伝えていきたいこの仕事

金柑甘露煮

COOKING INGREDIENTS

伝えていきたいこの仕事

COMMENT

「すべての品を手作りする」をコンセプトに、シリーズでお伝えする『伝えていきたいこの仕事 おせち料理編』。第五回は、金柑甘露煮をご紹介します。作り手は、鈴木直登師範(東京會舘2009年1月)です。

金柑甘露煮の作り方

金柑甘露煮の作り方

  1. 金柑甘露煮は、金柑の蔕を取ります。蔕は木の部分で固いので必ず取ってしまいます。使用する金柑は、熟れたものでは実が柔らかくなり過ぎて日保ちしなくなってしまい、かといって熟していないと今度はアクが出てしまって美味しく仕上がらないので、微妙に難しいところですね。

    金柑の実に庖丁を入れて茹でますが、これは中の種を取るためです。庖丁目はなるべく数少なく、また、中に入っている袋が切れていないと種を取り出すことができませんので、ある程度深く庖丁を入れますが、深く切り過ぎて切り離してしまうと、今度はお祝い事に使えません。庖丁を入れたものはすぐに酢を少し入れた水に落としていきますが、これは水にさらしているわけではなく、そのままおくと金属(庖丁)を入れたところが空気に触れて酸化するのを防ぐためです。庖丁目を入れたところから竹串で探り入れて種を一つずつ出していきますが、これは結構大変で、種なし金柑というのがあったら最高だなと思う瞬間でもありますね(笑)。この作業をする前に一度茹でて柔らかくしておかないと金柑が割れてしまいますので、熱湯に入れてある程度火を入れるわけですが、この後シロップで煮た時に完全に火をすようにするため、この段階では完全に火を入れないようにします。火が入ってくるとだいたい浮いてきますので、そこで皮の固さをみて判断し、氷水に入れます。大きさも熟し方も個体差があり、やはり茹でる時間も違うので、浮いたものから掬っていくような感じにします。厳密にいえば、金柑の熟れ具合によって糖度が違うため、茹で方はもちろん、細かく言うと、砂糖の量、蒸す時間もすべて変わってきます。ここで茹でてちょっと固かったなと思う時でも二度茹でできないので、最終的に水にさらして種を取った時に、一度蒸し器にかけ、その時に、早かった部分を、まあ、かなり微妙な調整ですけど行います。

    砂糖水とかシロップに含ませますが、この時は水分を一番嫌うので、一度水に落としていますから、必ず水抜きをして、温度を一定にして落としていきます。冷たいまま落としてしまうと、せっかく砂糖水が溶けてちょうどよくなっているものが、急に冷えて固まってしまいます。そのために同じ温度に持っていってなじませるわけです。

    1. 金柑甘露煮1
      金柑の蔕を取ります。

    2. 金柑甘露煮2
      金柑の実に庖丁を入れ、酢を少し入れた水に落とします。

    3. 金柑甘露煮3
      熱湯に入れて火を通します。

    4. 金柑甘露煮4
      火が入って浮いてきたところで皮の固さをみて引き上げます。

    5. 金柑甘露煮5
      氷水に入れます。

    6. 金柑甘露煮6
      庖丁を入れたところから竹串で種を取り出していきます。

鈴木直登 氏

  • 大手町・東京會舘
  • 和食総調理長・師範