COOKING INGREDIENTS
伝えていきたいこの仕事
東京會舘のおせち料理
東京會舘のおせち料理の作り方
東京會舘のおせち料理の作り方
-
正月の重詰料理は大きく分けて祝肴・口取・焼物・煮物の四種があり、それぞれ別のお重に詰めます。詰める順序は店の伝統や作る人によって多少異なります。
関東のお重は、ぎっちり隙間のないように詰めるところが特徴です。持って歩くものですから、揺すった時に隙間があると崩れてしまうため、動かないようにきちっと角を立て、四隅まで全部詰めていく、文字通り重ねて詰めるわけです。いくらおめでたいからと云っても、例えば伊勢海老などの殻ものは入れないのが本来の姿です。何cm何cmというように定規できちっと測って詰めるようなものが関東のおせちですが、それでは見た目にも難がありますので敢えて少し変形させています。
お重というのは、本来なら漆器でないといけません。漆器というのは中が木ですから、通気性もあるのでしょうね、防腐の役目にもなりますし、金の蒔絵が入っているので余計痛みにくくなっています。また、お重の場合、中に入っているものがすべて見えるようにします。重なっているため下にあるものが見えないといったような、人が不安を感じるような盛り方ではいけません。 -
-
壱の重
壱の重は口取です。甘いものが多く、金団、金柑や煮梅などが入ります。蒲鉾などの練り物、正月につきものの伊達巻もここに入ります。お祝い事なので、紅白のものが多いですね。
壱の重
紅白蒲鉾
七福伊達巻
祝栗金団
伊勢海老
熨斗鶏
源平鮑
蟹更紗焼
松葉慈姑
五三竹南蛮漬
梅花長芋
赤べこ焼
烏賊黄金焼
錦玉子
百合根羹
金柑甘露煮 -
弐の重
弐の重は基本的に焼物が入ります。ここに魚介類を入れ、なるべく魚の匂いなどが他に移らないようにします。そしてここには酢の物というか、酸っぱいものを一緒に入れます。焼物はどうしても固くなるため、必要以上に火を入れられませんから、どちらかというと腐敗が早いのですが、酢の物が一個、例えば梅干が一個入っているだけでも日保ちが全然違ってきます。鴨などの肉類もやはり日保ちしないものですから、重詰に入るようになったのはそんなに古くからではく、昭和30年代以降ではないかと思います。
弐の重
鯛塩焼
鰆巻繊焼
真魚鰹柚庵焼
鮭板御神酒焼
甘鯛西京焼
銀鱈風味焼
鰤照焼
穴子八幡巻
蛤貝焼
帆立雲丹焼
寿留女印籠焼
合鴨鍬焼
結び酢牛蒡
羽子板
筆生姜 -
参の重
参の重は、主に砂糖を含ませた野菜の煮染めなどが入ります。海老芋や里芋など糖度の強い芋は割れが早くて煮崩れするため、本来は入っていなかったのが関西と違う点です。
本来おせち料理は乾物の料理なので、生ものを入れる習慣はありません。その年にとれた初物の野菜などはすべて、秋の収穫のあとまず神様に一度上げて、そのお下がりで作ったものですから、魚にしても芋類にしても、一度日に干したものを使います。
また、今と違って昔の砂糖は貴重なものでしたから、いいおせち・いいお重というのは、とにかく重み、砂糖がどのくらい入っているかというものでした。
参の重
八つ頭
車海老酒煮
松笠常武士
穂付竹の子
梅花人参
鶴長芋
亀甲椎茸
飛龍頭
豚角煮
大徳寺麩
手毬麩
松笠慈姑
竹麩
梅麩
蒟蒻鼈甲煮 -
与の重
四番目のお重・与の重は祝肴。「四」の字を嫌って「与」の字をあてます。正月を代表する料理で、数の子や黒豆、田作り、それに昆布〆や昆布巻などの巻物、なます、甘露煮などのおめでたい料理が入ります。これは口取に似たようなものですが、どちらかというと干した公魚や鰊、鮎のようなもの、あとは数の子などです。数の子も今は塩漬ですが、もともとは乾物を米のとぎ汁でもどしたものを用いていました。
与の重
鰊昆布巻
穴子昆布巻
子持鮎白板巻
大浦牛蒡不動煮
紅鮭求肥巻
黒豆葡萄煮
数の子風味煮
田作り照り煮
蛸梅煮
公魚南蛮漬
鮒飴煮
鯊甘露煮
唐墨
氷頭鱠
源平膾 -
五の重
重詰は正月の重詰がもっとも一般的ですが、五節句いずれにも用いられます。正月以外は略式で二段重ね程度が多くなります。
重詰の数は四季を表現しているといわれ、四段重ねが正式です。五段重ねのお重の場合、一番下の五の重というのは補足するためのもの、伊達巻、昆布巻、煮蛸などを切らないで丸のままここに詰めておき、それぞれのお重の中身がなくなってきたら、切り出して足していきます。
-
COMMENT
「すべての品を手作りする」をコンセプトに、シリーズでお伝えする『伝えていきたいこの仕事 おせち料理編』。最終回は、【東京會舘のおせち料理】をご紹介します。作り手は、鈴木直登師範(東京會舘2009年1月)です。