COOKING INGREDIENTS
伝えていきたいこの仕事
金団
金団の作り方
金団の作り方
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栗金団は本来ならば衣も全部栗だけで作るものですが、栗で作るとすごい手間がかかるんですよ。蒸して鬼皮剥いて、渋皮剥いて、明礬に入れて浸けて、それからシロップに漬け込む。それに芋の10倍くらいのコストがかかりますから、売値1万円くらいのお重に栗金団を使うわけにはいかないので、単価の安い薩摩芋を衣に用いるわけです。栗で作った衣というのはしっとり感が違って実に美味しい。これにさつま芋をどのくらい近付けられるかが決め手になります。
金団の衣は、まず栗金時(薩摩芋)の皮を剥いて薄く小口切りにします。薩摩芋は繊維が多く、まわりの繊維まで剥いておかないと、アクがまわるので、皮は厚めに剥きます。また、けっこう繊維が中まで食い込んでいますので、皮剥きだけではどうしても繊維が残ってしまいますから、庖丁を使って剥きます。小口切りは火の通りがいいようになるべく薄く、また、茹で上がりに差が出てしまいますので、なるべく一定の厚さ、大きさに揃えます。
皮を剥いたり、小口に切ったものをそのままおいて置くと空気に触れてアクが絡んできますから、3~4本ずつ剥いたらすぐ小口に切って水に入れて、そのまま一晩さらします。特にアクが絡みやすいのは芋の両端の部分、繊維が濃くなっているため、この部分は金団には使わないで落とします。もちろん捨てるわけではなく、また別の加工品に使いますから、両端の無駄はあまり気にしなくてもいいですね。量的に芋は70~80g。2~3割皮を剥いてしまうので実質的には40~50gを使います。
水にさらした薩摩芋を茹でます。最初に茹でてアクを抜いて、梔子で色を付けてから、本格的にしっかり茹でます。茹でる時は、鍋に入った時の状態をなるべく同じにするため、全体量を三つに分けて行います。茹でる時に山盛りにしてしまうと火の通りが悪くなるため、ちょっとゆったりと出来る程度に三つに分けます。
まず、沸騰している湯に入れて澱粉のアクを抜きます。芋にある澱粉がある程度流れ落ちないと、金団になった時にどうしてもねばりが残ってしまいます。後ほどきちんと茹でますから、ここでは少し固くてもかまいません。素材の芋にもよりますが、今回の場合はだいたい時間的に八分くらいです。アクが抜けたら、今度は梔子を入れた湯の入った鍋に移します。梔子を使うのは、使用するのが金時芋で色的に少し薄いのでちょっと色付けするためで、少し色が変わるくらいで引き上げます。金色をしているから金団なのですから、金団というのは二種類しかない。黄金色は黄金っぽく、また白金ならば白っぽくと、色にはこだわりたいですね。また余談になりますが、色付けというのは、単純に色を付けるだけではなくて、全部意味があります。例えば紅花は染めものに使いますが、寒ざらしにしても手が荒れません。薬草ですから肌によいためですが、それと同じで防腐剤の役目もする。そのように保存用になるとか抗菌作用になる。それでこういうものを使うわけです。先人の知恵ですね。
茹で上がりは、同じように作業をしていても、多少繊維が柔らかいものもあり、厳密に見極めることもできないので、やはり若干崩れるものも出てきますね。この後に裏漉ししますから。この段階で多少芋が崩れてもかまいません。
茹で上がったら鍋に入れ、砂糖を入れます。茹で上がったものから複数の鍋を使って練っていきますので、一つの鍋で使う芋の量に対して、練り上げる時に使用する砂糖の量の目安を、最初に計って決めておきます。砂糖は最初から一気に全部入れることはできません。砂糖は塩と違って火にかけると溶けて水っぽくなるので、火を入れて練る時にどうしても飴になりやすくなるためです。少し馴染ませるためにある程度の量だけを入れて、残りは後で入れるため、ラップに番号を付け、残りの砂糖がどのくらいか分かるようにしておきます。最初に入れるのはだいたい3分の1くらい、それ以上入れると今度は水っぽくなってしまいます。まず1回。トントントンと叩きながら。それで芋と砂糖を馴染ませます。ある程度砂糖と薩摩芋が馴染んだところで、今度は裏漉ししやすいようにすりこぎ棒でかるく潰し、裏漉しします。茹でてから潰して裏漉しするというところまでは、冷めないように一気に流れ作業でおこないます。冷めると砂糖というのは固まってきますから、馴染まないので漉せなくなるんですね。
薩摩芋の味を栗の味に近づけるため、芋臭さを消して栗の甘さと同じようにするため、芋を水によくさらし、砂糖を合わせるわけです。また、芋のほうが栗よりも繊維が強いので、よく漉さないとどうしても繊維が絡んで一体感が出ないので、口に入れた時に露骨に芋金団だと感じさせないように、なるべく衣が栗の裏漉ししたものに似るように、一番細かい裏漉しの目でかなりクリーミーな状態に仕立てていきます。ここまで漉しているところは、他にはちょっとないかもしれませんね。
裏漉ししたものに酒と蜜を合わせてから火にかけます。火にかける前に一度よく練り合わせておきます。砂糖と芋はお互いに固まる素質を持っていますから、ここで必ずきちんと合わせておかないと、馴染まずに、火にかけてからでは、うまく混ざらずに層になってしまいます。蜜を先に入れるというのは、ある程度の水分量がないと、火にかけるといきなり芋が固まり出してくるので、全体的に火を回すためにある程度の水分を入れて、水分の出るものを最初に入れます。これで芋の匂いなどを取るわけです。水分を加えないとしっかり火を入れられませんが、水を入れてしまうと腐敗の原因になってしまいますから代わりに酒を使い、火にかけているうちにアルコール分をとばします。火加減はあまり強くても駄目ですね。練っていく段階でのポイントは、最初にあまり弱火で練っていると水分だけが飛んでしまうので、少し強火である程度火を入れることです。これは砂糖が入っているため、早い段階である程度熱を加えていかないと、水分だけが飛んで飴のようになり、混ざりが悪くなるわけです。そのためにある程度まで強火でやっておいて、火が入ってきたら少し弱火にもどして、それで完全に固さを整えて、状態をみながら残りの砂糖を加えて練り上げていきます。火にかけたまま砂糖を入れるとダマができてしまうので、一度火から下ろしてから混ぜます。あまり何回も加えられないので、二回もしくは三回に分けて、煮詰まって飴にならないように加えていきます。砂糖はなるべく控えめにしているのが今の主流ですね。砂糖は保存のための防腐剤の役目を果たしているので多く入れるのはかまわないのですが、うちの場合、最近の傾向で、甘さを抑えて保存の効くぎりぎりの量まで砂糖を控えて作っています。
練り上げる時間は火加減にもよりますが、ある程度練り上げ、目安としては宮島(しゃもじ)で鍋底を一直線に引いて、左右からもどってくる芋の固さで仕上がりを見極めますが、これはもう肌で感じる感覚的なものなので、これは何分とかはちょっと言えないですね。栗を入れる直前に、ほんの少しだけ塩を入れて甘みを引き立たせます。
出来上がった衣と栗を合わせます。栗は秋のうちにシロップ漬にして保存しておいたものです。合わせる時は、衣になる芋と栗を同じ温度に仕上げておかないと、馴染まずに層ができて水分が出てしまいます。栗を合わせる時に味醂、水飴も一緒に入れますが、これは照りを出すためと、乾きを防ぐためです。味醂は固まる性質を持っているので、あまり最初から入れられませんが、ある程度ほぐれたものを味醂でちょっと締めるわけです。この時点で一度、岡混ぜといって、火にかけないでまず一度馴染ませ、衣と栗が一体になるように、少しずつ下から火を入れて馴染ませていきます。西洋料理は火力の料理ですから、西洋の鍋は角が使えないのですが、日本の鍋は雪平鍋が基本なので角が全部使えるようになっているんです。この作業が大切で、ガス台の上で縁を使いながら鍋を斜めにして行うと、柔らかい餅のようになって鍋から綺麗に剥がれ落ちてくる。今度は落ちたところを返して、それを少しずつ回しながら全体を合わせます。一度栗を入れると、栗が壊れるのでもう宮島を入れられません。あとはもう火加減だけで、鍋を返しながら合わせて仕上げていきます。昔はなかなか落ちてこないくらいに砂糖をたくさん入れて締めたものですが、今は比較的砂糖の量を少なめにしてあるので柔らくなっていますから、練り方も比較的前よりも時間は短縮されています。 -
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金団1
薩摩芋の皮を剥きます。 -
金団2
薄く小口切りにします。 -
金団3
水に入れて、そのまま一晩さらします。 -
金団4
複数の鍋を使うため、ひとつの鍋で使う芋の量を決めて計っておきます。 -
金団5
沸騰している湯に入れて澱粉のアクを抜きます。 -
金団6
今度は梔子を入れた湯の入った鍋に移し、少し色付けします。 -
金団7
柔らかくなるまで茹で上げます。 -
金団8
串がスッと入るくらいの固さが目安です。 -
金団9
茹で上がったものを鍋に入れます。 -
金団10
使用する砂糖の量を目安で量っておき、3分の1くらいを合わせます。 -
金団11
宮島で合わせて馴染ませます。 -
金団12
すりこぎ棒でかるく潰します。 -
金団13
裏漉しして酒と蜜をあわせ、火にかける前によく練り合わせます。 -
金団14
火にかけ、砂糖が飴にならないように、最初は強火で練ります。 -
金団15
火が入ってきたら、弱火にして練っていきます。 -
金団16
状態をみながら残りの砂糖を加えます。 -
金団17
宮島で鍋底を一直線に引いた時のもどり具合で練り上がりを見極めます。 -
金団18
出来上がった衣とシロップ漬の栗を同じ温度にして合わせます。 -
金団19
照りを出し、乾きを防ぐための味醂、水飴も一緒に入れます。 -
金団20
火にかける前に、馴染ませるため一度岡混ぜします。 -
金団21
栗が壊れるので、宮島を使わずに鍋を返しながら合わせます。 -
金団22
ガス台の上で縁を使いながら鍋を斜めにして合わせていきます。 -
金団23
次第に柔らかい餅のように鍋から綺麗に剥がれ落ちるようになります。 -
金団24
バットなどに移し、ゆっくり常温まで冷まします。
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COMMENT
「すべての品を手作りする」をコンセプトに、シリーズでお伝えする『伝えていきたいこの仕事 おせち料理編』。第六回は、金団をご紹介します。作り手は、鈴木直登師範(東京會舘2009年1月)です。